はじめに
マウスを用いた実験の過程で、リン酸緩衝生理食塩水や麻酔を注射することがありますよね。その際には左手でマウスを固定し、右手で注射器を扱います。
注射の種類は皮下注射、筋中注射、腹腔内注射などさまざまです。しかし今回紹介する方法・コツはそれらすべてに共通しますので、是非読んでみてください。
(訂正 2018/06/02)
皮下注射、筋中注射、腹腔内注射全てに共通すると書きましたが、この部分は誤りです。申し訳ございません。以下、当記事について指摘してくださったコメントを掲載します。
最初に皮下注、筋注、腹腔内全てに共通とありますが、 どこに注射するかによって保定もポイントも異なります。 どこの皮膚を張らせるか、針の進め方、針挿入後の感覚(シリンジが左右フリーに動くか)など、共通ではない事の方がむしろ多いです。 精々、尻尾を掴んで前肢で蓋を掴ませるぐらいまでじゃないですかね。
まずはマウスの尻尾をつかむ
http://honz.jp/articles/-/41866より引用
以前の記事でも書きましたが、マウスの尻尾を掴めなければ何も始まりません。注射以前の問題なので、この段階で躓いている人はマウスへの恐怖を取り除く練習から始めましょう。
例えば、マウスに優しく手を差し伸べる練習がいいです。マウスの警戒心を解くことができますし、自分自身もマウスに慣れることができると思います。
▼前回書いた記事
マウスの手をケージに掴ませ体を伸ばす
Intravenous Injection in the Mouse – Procedures With Care
写真のようにマウスにケージを掴ませます。次に尻尾を後方に引っ張ります。マウスはその力に抵抗するためケージにしがみつきます。
このような操作をする理由は、マウスの体を伸ばした状態で固定するためです。もし完全に伸びきっていない状態で掴もうとすると、彼らは体を曲げて手に噛みついてきます。ですので、この操作は怠らない様にしましょう。
右手で尻尾に力を加えつつも、左手でつかみに行く
Procedures With Care » Search Results » handling and restraint of rat
さきほどの操作を行いつつ、いよいよマウスを掴みます。右手は注射用、左手は固定用です。左手の親指と人差し指をマウスの首元に近づけていきます。これに中指を加えた三本で掴んでも構いません。
実はこの手順、一番マウスに噛まれるリスクが高いです。マウスは必死に抵抗をします。やや床側に押さえつけるような形で首元を持ちましょう。余りにも圧力をかけてしまうと、彼らの体に負担がかかるので注意します。
マウスの固定をしたら注射を行う
Mouse | Practical Animal Handling - Small Mammals | AHWLA
親指と人差し指と中指で首元を持ちつつ、薬指と小指でマウスの尻尾を挟み、固定します。
固定のコツですが、マウスの皮が余らないようにしましょう。特に首周辺の皮が余ってしまうと、首の可動域が大きくなり指に噛みつかれます。
首だけでなく、下半身の皮も余らせてはいけません。お腹の皮はぴんぴんに張った状態で固定するのが重要ですね。理由はマウスの足が動いてしまうことを防ぐためです。
注射針をお腹に刺すと彼らは必死に抵抗します。足をジタバタさせて注射針を除けてきます。ですから足の固定がスムーズに注射を行う際のポイントになります。
最後に
Intraperitoneal Injection in the Mouse – Procedures With Care
注射をする際は慎重になってください。いきなり針をブスっと刺すと、目的の位置から外れます。誤って肝臓を刺すと一発で即死します。
ゆっくりマウスの体と水平に針を進ませてください。そうすれば臓器が針をうまく除けてくれるので、内臓を傷つける心配がなくなります。
最後になりますが、YouTubeで今回の記事に関係のある素晴らしい動画を見つけたので載せておきます。
注射がスムーズですよね。この人の凄い所はマウスの固定を左手だけで行うところです。でも実際はこんなに上手くいかないので、皆さんは覚悟して望んでください。